小泉凡さんの名前について
小泉凡とは
小泉凡(こいずみぼん)さん(1961年〜)は、NHKの朝ドラ「ばけばけ」でレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)のモデルとなっている小泉八雲のひ孫にあたる人物です。
現在は小泉八雲記念館館長・焼津小泉八雲記念館名誉館長・島根県立大学短期大学部名誉教授として、小泉八雲と小泉セツの事績を現在に伝えています。
小泉凡さんの名前は”Bonner”から
「セツと八雲(朝日新書)」によると、小泉凡さんの「凡」という字は、かつてGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に勤務していたボナー・フェラーズ(Bonner Frank Fellers)准将の”Bon”から取られたものとなっています。
ボナー・フェラーズ准将は総司令官のダグラス・マッカーサー元帥の軍事秘書官で、昭和天皇が東京裁判で戦犯に指定されないように尽力した軍人として知られています。
実はボナー・フェラーズ准将は小泉八雲の著作をすべて読破しており、若き日の中尉時代には来日して晩年の小泉セツに会ったことがある人物です。
その縁で太平洋戦争の終結後、アメリカ軍が日本を占領したときには、真っ先に小泉家の安否を確認。小泉八雲とセツの孫に当たる小泉時さんを当時の日本人としては珍しく、GHQの無線通信士として雇い入れていたのでした。
小泉時さんがフェラーズ准将のファーストネームにちなんだ名前である「凡」を息子に授けたのは、曽祖父母の時から紡いだ縁があったからでしょう。
小泉凡さんの出自と家族
小泉凡さんの出自
冒頭で述べたとおり小泉凡さんの曽祖父と曽祖母は小泉八雲と小泉セツです。八雲とセツ夫妻は4人の子供たちをもうけますが、小泉凡さんはその中でも長男・小泉一雄の家系に当たります。
小泉一雄は妻・喜久恵との間に1925(大正14)年に、小泉時(こいずみとき)さんをもうけ、その時さんの長男が凡さんです。
小泉凡さんの家族
「セツと八雲 (朝日新書)」によると、小泉凡さんには祥子さんという奥様がいらっしゃって、小泉八雲記念館で学芸企画ディレクターをされているそうです。
なおGoogleを使って「小泉八雲 子孫 現在」と検索すると、ジュエリー・デザイナーである守谷天由子さんという女性の名前がヒットします。
守谷天由子さんは、小泉八雲・セツ夫妻の次男・稲垣巌の家系で、八雲とセツから見て玄孫に当たります。
小泉凡さんによる「小泉八雲・セツ夫妻」の研究
アイルランドと松江の共通点を研究
小泉凡さんは民俗学者として、小泉八雲・セツ夫妻の曾孫として、八雲・セツ夫妻の事績を現在に伝えています。その1つが八雲の故郷の1つであるアイルランドと松江の共通点に関する研究です。
小泉凡さんによるとアイルランドはカトリックのお国柄ですが同時にアニミズム的な民俗信仰が強く残り、八百万の神々が住むと言われる日本と精神性が似ていると説明されています。
例えば妖精が集まってくる「フェアリーツリー」というものがありますが、これは日本で古くから信じられてきた「荒神」のご神木と重なって見えます。 動物や植物、樹木や岩など、すべての自然物に霊魂的存在を認めるアニミズムは、両国に今も宿っているように思います。
小泉 凡; 木元健二. セツと八雲 (朝日新書) (p. 62). (Function). Kindle Edition.
現代のアイルランドでは「ゴーストバスツアー」という「怪談ツアー」が人気を博していますが、2024年11月には小泉凡さんがナビゲーターとして「ゴーストツアー in 隠岐」が催されています。
大江健三郎と小泉八雲の文学の方向性
「セツと八雲 (朝日新書)」を読んでいて印象に残るのは小泉凡さんが、今なお小泉八雲の文学作品が評価され続けているか考察されている点です。
小泉凡さんがノーベル文学賞を受賞された大江健三郎さんと1990年代ごろにしたお話としてこんな会話が残されています。
ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎さん(1935~2023)の言葉が思い出されます。30年ほど前、松江に来られました。出雲そばをともにすすりながら、ふとこんなことを語られたのです。 「僕のノーベル文学賞の受賞は、あなたのひいおじいさんと同じ方向性からなんですよ」 「まずもって受賞は個人の卓越した能力や作品への評価というよりは、むしろその人が帰属する地域文化への注目度のあらわれなのだ」と強調されるのです。
小泉 凡; 木元健二. セツと八雲 (朝日新書) (pp. 140-141). (Function). Kindle Edition.
八雲の文学は、いずれもカリブ海・日本・アイルランドなど、国民国家の本場である欧米世界から見ると「辺境」と言われる地域での異文化体験から偉大な作品が生まれています。
現代においてなお小泉八雲が評価され続ける理由を、小泉凡さんはノーベル文学賞受賞者との証言とつなげて分かりやすく説明されていることが印象的です。
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