柳瀬登喜子さんと「あんぱん」の柳井登美子
「姿を消す」「再会」を繰り返す「あんぱん」の柳井登美子
NHKの2025年朝ドラ「あんぱん」に登場する松嶋菜々子さん扮する柳井登美子は、実の子どもたちである柳井崇(北村匠海)・千尋(中沢元紀)兄弟の前から姿を消したり(第1週「人間なんてさみしいね」3話)、再会したり(第3週「なんのために生まれて」15話)を繰り返します。
柳井登美子のモデルとなった、やなせたかしさんの母・柳瀬登喜子さんは、やなせたかしさんや、2才下の弟・柳瀬千尋さんとはどうだったのでしょうか?柳瀬登喜子さんも、柳井登美子のように姿を消したり、再会したりしていたのでしょうか?
やなせたかしさんと母・柳瀬登喜子さん その後
母・柳瀬登喜子さんはやなせたかしさんが7才のときに別れる
柳瀬登喜子さんが最初に兄弟の前から姿を消したのは、やなせたかしさんが7才で小学校2年生のときのこと。夫・柳瀬清さんを亡くした柳瀬登喜子さんは、東京で官僚として働いている男性と再婚するためです。
柳瀬千尋さんはすでに伯父・柳瀬寛さんの養子となっており、やなせたかしさんも寛さんに引き取られて養育されることになります。
やなせたかしさんが母と再会することはなかった
やなせたかしさんの著作である「アンパンマンの遺書」や「人生なんて夢だけど」を読んでいると、やなせたかしさんが、母・柳瀬登喜子さんと再会した事実は述べられていません。
小学校2年生のときに「崇は伯父さんのところで病気を治してもらいなさい」と告げられて別れて以来、やなせたかしさんは母と再会を果たすことはなかったと考えられます。
柳瀬千尋さんと母・柳瀬登喜子さん その後
柳瀬千尋さんは大学在学時に再会を果たす
一方、柳瀬千尋さんの場合はどうだったのでしょうか?少なくとも母・柳瀬登喜子さんと1回は再会した事実があります。
なぜなら「人生なんて夢だけど」の65ページには、京都帝国大学法学部(現在の京都大学法学部)に在学し学生服を着た柳瀬千尋さんが、和装の母・柳瀬登喜子さんと2人だけで写っている写真が掲載されているからです。
その2人が写っている写真を自分の本に掲載しているということは、晩年のやなせたかしさんには母に対する思慕が残っていたのかもしれません。
断ち切れなかった母・柳瀬登美子さんへの思慕
朝ドラ「あんぱん」第4週「なにをして生きるのか」では、柳井千尋は実の母であるに関わらず、登美子のことを「この人」呼ばわりをして激しく反発するシーンがあります。このシーンを見る限り、千尋の心は登美子からすっかり離れてしまったようです。
しかし実在した柳瀬千尋さんの母に対する心情は違った可能性があります。やなせたかしさんの「人生なんて夢だけど」ではこのように書かれています。
弟は伯父伯母を本当の両親と思って育ちましたから、ぼくと違って何の悲しみもないとばかり思っていました。ところがある日、弟の愛読していた三好達治の詩集の中に実の両親の写真がはさんであるのを発見したとき、初めて弟の心情が理解できました。血は水よりも濃しですが、伯父伯母に対してなんだか申し訳ない気分になりました。
大学在学時に母と写っている千尋さんの姿を見ていると、柳瀬千尋さんは母・登喜子さんを慕っていたと考える方が妥当なようです。
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