やなせたかしが海軍で戦死した原因
柳瀬千尋さんは駆逐艦乗艦時に敵潜水艦の魚雷に被弾
NHK朝ドラ「あんぱん」で、やなせたかしさんの弟・柳瀬千尋さんは、駆逐艦「呉竹」の乗組士官として、1944年12月30日、バシー海峡で対潜作戦に従事している最中に敵潜水艦の魚雷に被弾して戦死しました。
京都帝国大学法学部を卒業した柳瀬千尋さんが、「呉竹」乗組の士官として戦死したときの様子はどうだったかなどについては、「柳瀬千尋 戦死 駆逐艦「呉竹」の分隊士として やなせたかしの弟」という記事に詳細をまとめています。
柳井千尋と柳瀬千尋さんの配置 対潜学校と水測室
柳井千尋も柳瀬千尋さんも対潜学校に入校
NHKの朝ドラ「あんぱん」の第11週「軍隊は大キライ、だけど」で、柳井崇(北村匠海)と柳井千尋(中沢元紀)は、陸軍伍長と海軍少尉として再会します。
「……千尋、どういうことだ。俺はてっきり、京都帝国大学で勉強に励んでるとばかり……ちゃんと説明しろ」 「卒業が半年繰り上げになって、海軍予備学生に志願した。もう少し学生生活を満喫したかったが、まず海兵団に入り、それから対潜学校に入った」 「タイセン?」 「対潜水艦作戦のための学校だ。駆逐艦に乗るための訓練を四か月でたたき込まれた」 「駆逐艦だって? なんで海軍予備学生なんかに?」 「遅かれ早かれ兵隊に取られる。それならばと……」 嵩は怒りがこみ上げてきた。千尋がなぜこんな選択をしたのか、納得できなかった。 「なんで! なんで志願なんかしたんだよ!」 「兄貴もあの場にいれば分かる……みんなが行くのに、一人だけ行かないわけにはいかなかった。卑怯者になりたくなかったんだ」
中園 ミホ; 後藤 美奈. NHK連続テレビ小説 あんぱん 上 (pp. 226-227). (Function). Kindle Edition.
朝ドラ「あんぱん」の柳井千尋は、京都帝国大学を繰り上げて卒業した後に、海軍士官を速成する海兵団に入団。そして対潜学校という潜水艦作戦に従事する将兵を育成する海軍の術科学校に入校したようです。
海兵団も対潜学校も、現代のほとんどの日本人にとって馴染みのない言葉です。しかしこれらの組織は、実在した柳瀬千尋さんが京都帝国大学法学部を繰り上げて卒業した後に入ることになった、旧日本海軍の組織をモデルとしています。
聴力に自信があった柳井千尋
「あんぱん」の第11週によると、柳井千尋は海軍に入隊したのち海軍航空隊のパイロットに志願したが落とされたと兄の崇に話します。
そこで次に千尋が志願した配置は、潜水艦を探知するための水測室でした。伯父の柳井寛(竹野内豊)の家で、さまざまな音楽のレコードを聞いて育ったため、聴力に自信があるようです。
柳瀬千尋さんは幼少時から聴力を鍛えていた
こうした海軍士官としての柳井千尋の設定は、「慟哭の海峡」という本の内容を意識していると考えられます。実在の柳瀬千尋さんも聴力に自信があったと考えられています。
また、養子に入った清の兄、寛も音楽が大好きだった。洋楽が日本の伝統音楽、いずれにも造詣が深く、千尋の生活は、生まれてから少年、そして青年へと成長していく過程で、常に音楽と共にあった、と言っていいだろう。
敵潜水艦との闘いは、水中での潜水艦の音を「どうキャッチするか」にかかっている。すなわち「聴力」である。幼い頃から、音楽に接してきた者は、知らず知らずにほかの者より聴力が養われている。門田隆将「慟哭の海峡」角川書店 181ページより
ただ幼いころからさまざまな音楽を聞いてきたと言っても、それだけでは実戦には役に立ちません。戦闘の時に聴き分けなければならない音とは、自艦のスクリュー音、波を切る音、僚艦のエンジン音などです。
海の中から敵潜水艦の音を発見することは、それ以外のさまざまな音を聴き当てて取り除くという常人では困難な作業を経なければできないことです。
柳井千尋も柳瀬千尋さんも駆逐艦の水測室で戦死
NHKの朝ドラ「あんぱん」をノベライズした「NHK連続テレビ小説 あんぱん 上」では柳井千尋が戦死する様子を詳しく描写する場面はありません。
第13週「サラバ 涙」で兄の柳井千尋が高知の御免与町に陸軍伍長として復員したときに、千尋が戦死したことを伯母・柳井千代子(戸田菜穂)から知らされます。
朝ドラ「あんぱん」第11週における兄弟の会話を踏まえると、実在の柳瀬千尋さんが駆逐艦「呉竹」の乗組士官として水測室で戦死したように、ドラマの柳井千尋も駆逐艦の水測室で敵潜水艦の魚雷に被弾して戦死したと考えられるでしょう。
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