朝ドラ ばけばけ 雨清水傳のモデル
雨清水傳(うしみずでん)とは
2025年後期NHK朝ドラ「ばけばけ」に登場する、堤真一さん扮する雨清水傳(うしみずでん)とは、髙石あかりさん演じるヒロイン・髙石あかりさんの親戚にあたる人物です。
雨清水傳のモデルは実在した小泉セツの実父である、小泉湊(こいずみみなと)(1837年〜1887年)であると考えられます。
ばけばけ 雨清水傳の役柄
松江藩に名をはせる上級武士で文武両道のエリート。親戚のトキを大変可愛がっており、幼い頃からなにかと気にかける。松江で知らない人はいないほどの人格者で、変わりゆく時代の中、トキをはじめ多くの没落士族に手を差し伸べようと尽力する。
雨清水傳 役 堤真一さん プロフィール
1964年生まれ、兵庫県出身。NHKでは大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』、土曜ドラマスペシャル『とんび』、連続テレビ小説『マッサン』など、多彩な作品に出演し、印象的な役柄を好演。
小泉湊とはどんな人物だったのか
松江藩の三百石取りの上級武士
NHKは雨清水傳を「松江藩に名をはせる上級武士で文武両道のエリート」と設定します。モデルとなった小泉湊もこの設定通りの人物です。
小泉湊の小泉家は代々、出雲国の松江藩で三百石を食んだ家柄で、50人の組士の侍を統率する番頭(ばんがしら)を務めてきた家柄でした。
松江藩には上士と言われる侍は約1,000人が存在し、そのうち「家老(かろう)」・「中老(ちゅうろう)」・「番頭」を務める50の家は、特に名誉ある家として知られていました。
小泉湊は「文武両道のラストサムライ」だった
小泉湊は、その由緒正しき小泉家の八代目にあたる人物で、まさしく「文武両道のエリート」でした。「八雲の妻 小泉セツの生涯」の本文の冒頭では、幕末期の小泉湊をこのように紹介しています。
セツの父親の小泉弥右衛門湊(こいずみやえもんみなと)は、当時三十一歳で、前の年の九月に、父七代弥右衛門岩苔(がんたい)の病気引退の後を受けて、家督を相続したばかりである。彼は小兵ながらも意思堅固で、しかも覇気に富んだ侍であった。青年時代から武芸に秀でていた彼は、当時、藩の習兵所の取締役を務めていたし、幕末の激動期にあって、あるいは京都の守衛に、あるいは長州戦争での一隊の指揮に、その力量を発揮してきた。
長谷川洋二「八雲の妻 小泉セツの生涯」今井書店 11ページから12ページ
小泉セツは1868(慶応4)年2月生まれで、その年の9月に元号が「明治」に改元されています。
31才のときにセツの「産みの父」となり、幕末期に武士としての戦歴がある小泉湊はまさに「ラストサムライ」であったと言えるでしょう。
小泉家の家格は稲垣家よりも上
ちなみに小泉セツが生後7日にして養子に出されることになる稲垣家も、松江藩では上級武士の家柄でした。しかし稲垣家は「並士」と言われる家です。
松江藩の記録でも稲垣家の家柄は、約1,000人の上級武士たちのうち、およそ450番目の家柄とされていました。
よって小泉家の家格は上級武士の家格があった稲垣家よりもはるかに高く、NHKも小泉湊をモデルとした雨清水傳の設定を「松江藩に名をはせる上級武士」と形容している理由も史実に基づくものであると考えられます。