柳瀬清はやなせたかしの父親 柳井清のモデル
朝ドラ「あんぱん」の柳井清(二宮和也)のモデルは、実在した漫画家・やなせたかしの父・柳瀬清がモデルであると考えられます。
NHKが2024年8月1日に行った朝ドラ「あんぱん」の出演者発表では、二宮和也さんが扮する柳井清のキャラクターについてこのように説明しています。
出版社を経て新聞社での海外赴任時代に病死。文学や絵に造詣が深い、嵩が大好きな父。清は既に他界しているところから物語は始まる。
朝ドラ「あんぱん」における柳井清のキャラクター設定はいかにもドラマに出てきそうな感じの役柄です。ですがモデルとなった柳瀬清も実際にこの通りの人物であったと考えられます。
柳瀬清 東亜同文書院→日本郵船→講談社→東京朝日新聞
柳瀬清は、高知県香美郡香北町で江戸時代から続く名家・柳瀬家の出身で、柳瀬治太郎(やなせたかしの祖父)の次男として生まれます(長男は柳瀬寛)。
やなせたかしさんの「アンパンマンの遺書」によると、学生時代は中国・上海の東亜同文書院(戦前に存在した私立大学)に留学したのち、日本郵船・講談社と転職し、東京朝日新聞に就職したそうです。
東京朝日新聞の記者として上海に駐在していた1919年2月6日にやなせたかしが誕生し、その2年後に弟・柳瀬千尋が誕生します。
やなせたかしの弟・柳瀬千尋について
やなせたかしに優しかった柳瀬清
柳井清のキャラクター設定では「文学や絵に造詣が深い、嵩が大好きな父。」とありますが、「アンパンマンの遺書」によると、この設定を思わせるような記述があります。
家には、その当時の小市民階級の文化的シンボルだった蓄音機があった。レコードはクラシックが多かったが、子供のためを思ったのだろう、童謡も数枚あった。
ぼくはこの中で、三つの歌に強い印象をうけ、今でも歌える。野口雨情の「青い眼の人形」と、北原白秋の「雨」と、当時の澄宮、現在の三笠宮作詞の「キミクンガゴショカライソギカエルトキ マチニデントウツキニケルカナ」である。
(中略)
父親は非常に優しく、毎日おみやげを買ってくるような人だった。気の強い母よりも、ぼくは父になついていて、これが後年までファーザー。コンプレックスとなって、ぼくの人生に長く尾を引いていく。やなせたかし「アンパンマンの遺書」 岩波現代文庫 7ページから8ページ より
柳瀬清はやなせたかしが4歳の時に病死
朝ドラ「あんぱん」のお話では「清は既に他界しているところから物語は始まる。」とあります。実在の柳瀬清はやなせたかしさんが4才のときに、朝日新聞の特派記者として中国の広東において33才で病死しています。
このとき柳瀬清は単身赴任で広東に駐在し、妻の柳瀬登喜と2人の子どもであるやなせたかしさんと弟の柳瀬千尋は高知に残していました。やなせたかしさんは、柳瀬清の葬式が行われたときの情景は覚えていたそうですが、父が死んだことやその意味についてはまだわからなかったそうです。
朝ドラ「あんぱん」でやなせたかしさんがモデルとなっている柳井崇(北村匠海)がある程度成長してからドラマに登場するとなると、「清は既に他界しているところから物語は始まる。」というのは史実とドラマは一致しているということになるでしょう。