「あんぱん」の「戦争編」と階級制度について
やなせたかしさんや柳瀬千尋さん 軍隊での階級とは
NHKの2025年前期朝ドラ「あんぱん」の第10週「生きろ」の50話から「戦争編」が本格的に始まりました。第11週「軍隊は大きらい、だけど」では太平洋戦争・日中戦争当時の軍隊生活が描かれています。
軍隊と言えば階級を軸とした厳然とした縦組織ですが、現代の日本ではあまり馴染みのないシステムです。ただ「あんぱん」を視聴する上では、登場人物がどの階級にあるか知っておいた方が内容を理解しやすいでしょう。
そこで今回の記事では、柳井崇(北村匠海)や柳井千尋(中沢元紀)など「あんぱん」の主要な登場人物がどの階級にいるのか、当時の軍隊における階級制度に基づいて紹介いたします。
朝ドラ「あんぱん」と階級(日本陸軍の場合)
下記は柳井崇が所属した陸軍の階級表です。柳井崇は陸軍に入隊した後、兵として最も低い「二等兵」の階級を与えられますが、第53話で幹部候補生試験を受験して乙種で合格できたため、下士官として「伍長」の階級に昇進します。
実在したやなせたかしさんも陸軍に入隊した後、幹部候補生試験を受験し乙種合格したことにより「伍長」に昇進しました。
ちなみにやなせたかしさんはその後も昇進して、日本の敗戦時には「軍曹」の階級まで昇進していました。
| 階級 | 区分 | あんぱんの主な登場人物 | 実在した人物の階級 |
|---|---|---|---|
| 大将 | 士官 | ||
| 中将 | 士官 | ||
| 少将 | 士官 | ||
| 大佐 | 士官 | ||
| 中佐 | 士官 | ||
| 少佐 | 士官 | ||
| 大尉 | 士官 | 島仙吉 | |
| 中尉 | 士官 | ||
| 少尉 | 士官 | 目黒新(幹部候補生試験甲種合格後) | |
| 准尉 | 准士官 | ||
| 曹長 | 下士官 | ||
| 軍曹 | 下士官 | 神野万蔵・粕谷将暉 | やなせたかしさん(敗戦時) |
| 伍長 | 下士官 | 柳井崇(幹部候補生試験乙種合格後) | やなせたかしさん(乙幹合格後時) |
| 兵長 | 兵 | 田川岩男 | |
| 上等兵 | 兵 | 八木信之介・馬場力 | 新屋敷上等兵 |
| 一等兵 | 兵 | 甲田鉄・今野康太 | |
| 二等兵 | 兵 | 柳井崇・目黒新(入隊時) | やなせたかしさん(入隊時) |
幹部候補生試験とは
旧日本陸軍において少尉以上の士官となるためには、基本的に陸軍士官学校という幹部養成を目的とした軍の学校を卒業する必要がありました。
しかし戦局の悪化に伴い、現場の戦闘を指揮する少尉・中尉クラスの初級士官や下士官が不足する事態が発生します。
そこで当時の陸軍は徴兵で召集した兵の中から、旧制中学・高等専門学校・大学卒業の高い学歴を持つ者に対して、幹部候補生試験を受験させ士官学校出の士官たちとは別に、士官や下士官に登用するコースを用意していました。
朝ドラ「あんぱん」と階級(日本海軍の場合)
柳井崇の弟・柳井千尋は京都帝国大学法学部を卒業した後、海軍に入隊します。第53話で崇と再会したときには士官として「少尉」の階級にありました。
「あんぱん」の柳井千尋のモデルとなった柳瀬千尋さんも京都帝国大学法学部を卒業した後に海軍予備学生に志願を経て、海軍の「少尉」となっていました。
ちなみに柳瀬千尋さんは、1944(昭和19)年12月30日にバシー海峡で戦死したことによって「中尉」の階級に昇進します。
| 階級 | 区分 | あんぱんの主な登場人物 | 実在した人物の階級 |
|---|---|---|---|
| 大将 | 士官 | ||
| 中将 | 士官 | ||
| 少将 | 士官 | ||
| 大佐 | 士官 | ||
| 中佐 | 士官 | ||
| 少佐 | 士官 | ||
| 大尉 | 士官 | ||
| 中尉 | 士官 | 柳瀬千尋さん(戦死後) | |
| 少尉 | 士官 | 柳井千尋 | 柳瀬千尋さん(海軍予備学生修了後) |
| 兵曹長 | 准士官 | ||
| 一等兵曹 | 下士官 | ||
| 二等兵曹 | 下士官 | ||
| 三等兵曹 | 下士官 | ||
| 水兵長 | 兵 | ||
| 上等水兵 | 兵 | ||
| 一等水兵 | 兵 | ||
| 二等水兵 | 兵 |
