トミー・バストウさんの左目と小泉八雲の失明
「ばけばけ」のレフカダ・ハーンは左目を失明
NHKの2025年後期朝ドラ「ばけばけ」に登場するレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)は左目が失明しています。これはヘブンのモデルとなった小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が左目を失明していた史実にもとづく設定でしょう。
2025年5月23日にNHKが公開した朝ドラ「ばけばけ」の松江ロケ報告会に関する記事で、トミー・バストウさん扮するレフカダ・ヘブンのビジュアルが写真で公開されています。
その写真を見ると、レフカダ・ヘブンの左目の瞳の部分が白くなっており、明らかに右目と異なるということが分かります。
トミー・バストウさんの左目は特殊メイク用のコンタクトレンズか
朝ドラ「ばけばけ」のレフカダ・ヘブン役としてトミー・バストウさんが決まったときの写真を見ると、トミー・バストウさんの両目は青くなっています。
レフカダ・ヘブンとしての役作りのために、おそらくトミー・バストウさんの左目には特殊メイク用のコンタクトレンズを使用していると考えられます。
小泉八雲の左目について
左が隠れている小泉八雲の写真
現在伝わっている小泉八雲の写真は、左目の様子が分からないように顔の右側を正面にしていたり、正面を向いた写真であっても左目の様子が分からないように伏目がちになっています。
これは左目を失明したことにより、自らの容貌に自信がなくなり、顔の左側を隠す癖ができてしまったことに関係していると思われます。
「左の眼球の上には白い星がかかっていた」
では小泉八雲に実際に会ったことがある人には、小泉八雲の左目はどのように見えていたのでしょうか?
東京帝国大学文科大学で小泉八雲に師事した英文学者の田部隆次は、小泉八雲の死後に発表した「小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン」で、小泉八雲の左目の印象についてこのように述べています。
初めて教室で見た先生は、背の低い、しかし骨格のしっかりした、皮膚の日にやけたように鳶色に近い、そして左の眼球の上に白い星のかかった人であった。非常に近視であることも分った。
田部隆次. 小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン (中公文庫) (Function). Kindle Edition.
田部隆次は「左の眼球の上に白い星のかかった人」と表現しています。16才のときに遭遇した事故のために左目の虹彩の上に白い膜がかかってしまったと考えられます。
小泉八雲は義眼もしなかった
他方、小泉八雲は自らを飾り立てたりすることや、何かを偽ることも嫌いだったようです。小泉八雲・小泉セツ(朝ドラ「ばけばけ」の松野トキのモデル)夫妻の長男であると小泉一雄は、著作の「父小泉八雲」において八雲は決して左目に義眼をすることはなかったと伝えています。
NHKの朝ドラ「ばけばけ」で登場するレフカダ・へルンは左目が失明していることや、それを隠すことがないといった設定はこうした史実や実際に小泉八雲の会ったことがある記録によるものでしょう。