小泉八雲と「ばけばけ」トミー・バストウさんの左目について
小泉八雲は16才のときに左目を失明していた
NHKの2025年後期朝ドラ「ばけばけ」のトミー・バストウさんが扮するレフカダ・ヘブンは左目を失明しています。これはヘブンのモデルとなった小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が左の目を失明していた史実にもとづく設定です。
八雲の左目の失明は、1866(慶応2)年、16才のときに在学していたカトリック系の学校である「アショー・カレッジ(セント・カスバート・カレッジ)」において、”The Giants Stride”という遊びをしているときに友人が放った縄の先が、左目に当たったことによるものです。
この事故により小泉八雲は長期間病院に入院することになりますが、左目の視力は生涯にわたって回復することはありませんでした。
レフカダ・ヘブン役 トミー・バストウさん 「左目失明」設定の裏側
レフカダ・ヘブン役のトミー・バストウさんの左目は失明しておらず、きれいな青色の瞳をしています。
2025年9月29日にmodelpressが公開した記事『朝ドラ「ばけばけ」ヘブン(トミー・バストウ)の左目失明設定の裏側「本格的に取り組みたいという思いがあった」制作統括が明かす【インタビューVol.3】』は、左目が失明したように見せるために、特殊なコンタクトを使ってどのように試行錯誤されているかを詳しく説明しています。
小泉八雲の左目はどんな感じだったのか
東京帝国大学文科大学で小泉八雲に師事した英文学者の田部隆次は、小泉八雲の死後に発表した「小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン」で、小泉八雲の左目の印象についてこのように述べています。
初めて教室で見た先生は、背の低い、しかし骨格のしっかりした、皮膚の日にやけたように鳶色に近い、そして左の眼球の上に白い星のかかった人であった。非常に近視であることも分った。
田部隆次. 小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン (中公文庫) (Function). Kindle Edition.
田部隆次は「左の眼球の上に白い星のかかった人」と表現しています。16才のときに遭遇した事故のために左目の虹彩の上に白い膜がかかってしまったと考えられます。
ちなみに小泉八雲の長男である、小泉一雄は「父小泉八雲」において、「八雲は偽物嫌い」であったとし、義眼はしていなかったと言います。
嘘があんなに嫌いで、義眼も義歯もしなかったのに、実在せぬ化物共の話を好んで取扱っている。
小泉一雄. 父小泉八雲 (p. 33). (Function). Kindle Edition.
小泉八雲の右目は中等度の近視だった演出
小泉八雲の右目は−2.5D
小泉八雲が目で苦労するのは左の方だけではありませんでした。小泉八雲の家系は代々近視だったようで、八雲も生まれついての近視眼でした。
残る一眼は元来の強度の近視に加えてますますその負担が重くなった。たえざる読書執筆のためにこの眼を刺激する事が多いので時々悪くなった。眼に対する用心も深く、机上つねに小鏡を具えて眼を検査した。読書執筆のために机は特別に高く作らせ、眼が充血しないように注意した。ヘルンは自分だけでなく、家人や書生が新聞を下に置いて読む事さえも厳しく禁じた。ヘルンの近視は二度半であった。その片眼鏡はつねに二つ携えて万一に備えた。
田部隆次. 小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン (中公文庫) (Function). Kindle Edition. No.976
上述した田部隆次は、八雲の近視は「二度半」と述べています。「二度半」とは−2.5D(ディオプター)のことであり、中等度の近視のことを指します。
レフカダ・ヘブン 右目は中等度の近視か
小泉八雲の左目は失明、右目は中等度の近視であったため、新聞を読んだり、書き物をするときなどは、顔を極端なまでに机に近づけていました。
朝ドラ「ばけばけ」のガイドブックである「連続テレビ小説 ばけばけ Part1 (1)」ではトミー・バストウさんがレフカダ・ヘブン役として背中を丸め、机に顔を近づけて書き物をしている写真が掲載されています
こうした演出も「小泉八雲の右目」は近視だったという史実に基づくものでしょう。
小泉八雲 トミー・バストウ 目に関連する記事
小泉八雲が左目を失明していた史実など
今回の記事は過去に書いた小泉八雲が失明した事実や、トミー・バストウさんの役作りに関する記事を参考にしています。

