結論から言うと、大関哲は「風、薫る」に登場する美津のモデルとなった人物です。
実在人物を知ることで、ドラマの背景や人物像の理解が深まります。
▼要点まとめ
・美津のモデル
・大名家出身の女性
・家族観に影響
本記事では、大関哲の人物像と史実を詳しく解説します。
結論|大関哲は美津のモデルとなる人物
結論から言うと、大関哲は「風、薫る」に登場する美津のモデルとなった人物です。
▼要点まとめ
・美津のモデルとされる人物
・大名家出身という出自が家族構造に影響を与えた存在
・史実理解の軸となる人物
大関哲の人物像
生い立ち: 下野国烏山藩主の大久保家出身
「風、薫る」に登場する美津のモデルとされる大関哲(おおぜきてつ)は実在した人物です。
大関哲の実家は、江戸時代後期から明治維新の時期まで下野国烏山藩を治めていた大久保家で、烏山藩の藩主の娘でした。
家族背景: 夫・大関弾右衛門増虎の大関家も那須地方の名族
下野国烏山藩を治めていた大久保家は、いわゆる「三河以来の譜代大名」の家系です。
「三河以来」とは江戸幕府を開き、初代の征夷大将軍となった徳川家康が、まだ三河国の一大名に過ぎなかった頃からの「最古参の家臣」であることを意味します。
身分や家柄を何よりも重んじる封建社会において、大関哲の実家である大久保家は優れた血統であり「名族」と呼ばれる存在でした。
ちなみに大関哲の結婚相手である、夫・大関弾右衛門増虎の大関家も、烏山藩の大久保家と同じく、下野国那須地方では「名族」と呼ばれる存在でした。
大関弾右衛門増虎は庶流の家柄ですが、本流の大関家は徳川幕府の体制が始まる戦国時代後期から、すでに那須地方の黒羽(現在の栃木県大田原市黒羽地区)を治めていました。
大関家の本家は1600(慶長5)年の「関ヶ原の戦い」の際、家康が率いる東軍に味方。1603(慶長8)年に江戸幕府が成立すると、大関家は本領を安堵され外様大名として引き続き黒羽藩を治めることになりました。
つまり「風、薫る」の主人公・一ノ瀬りんのモデルとなった大関和さんの先祖を遡っていくと、実は徳川幕府よりも古い歴史を持つ家柄だったことが分かります。
家族構造と影響
美津との関係
「那須烏山の藩主の娘」であった大関哲は、朝ドラ「風、薫る」の作品にも反映されています。
大関哲をモデルとする、一ノ瀬美津(水野美紀)というキャラクターは「那須地方で小藩を治めていた藩主の一族」という設定です。
ちなみに大関哲の実家である那須烏山藩の石高は2万石で、大名家の規模としては「小大名」と言っても差し支えないでしょう。
親から子への影響
こうして見ると、「風、薫る」の主人公・一ノ瀬りん(見上愛)のモデルとなった大関和さんは、父と母はいずれも、「名族」と呼ばれる武家出身であったことがわかるでしょう。
こうした大関和さんの出自は「気位の高い人」という単純な見方にとどまることなく、”nobles oblige(ノブレス・オブリージュ)”という「高貴なる者の務め」という行動となって表れます。
晩年、大関和さんが経営する派出看護婦会である「大関看護婦会」の財政状況は、常に火の車であったと言われています。
これは現代の会社経営でもありがちな「放漫経営だった」や、明治時代初期によく皮肉られた「武士の商法」のように、単純なものの見方で説明できるものではありません。
大関和さんは「黒羽藩の国家老の娘」という出自を好まれ、上流階級の家庭から派出看護婦を依頼されることが多く、「大関看護婦会」は収入面ではあまり困ることはなかったようです。
→ 大関和さんが看護した患者には政府高官やその家族たちが含まれていた史実
しか問題は支出面です。「ノブレス・オブリージュ」を体現する大関和さんは、上流階級の家庭を「優良顧客」として多く持つ一方で、貧者に対しては無料での看護ばかりではなく、生活面での扶助も惜しみませんでした。
その結果、「大関看護婦会」は収入が多かった一方で、「持ち出し」となる経費もかなり多かったと、日本の近代看護について詳述する「大風のように生きて: 日本最初の看護婦大関和物語」は説明しています。
どうやら大関和さんは、金銭に関して「金は天下のまわりもの」という、大変おおらかな考え方の持ち主だったようです。
ドラマとの関係
モデルとしての役割
実在した大関哲は那須烏山藩の「藩主の娘」でした。
一方、朝ドラ「風、薫る」の一ノ瀬美津は、若干薄められて「小藩を治める藩主一族の出身」という設定です。
ドラマと史実の違い
「藩主の娘」や「藩主の一族」のどちらにせよ、封建社会であった江戸時代において、どちらもかなり上級の武家の出身であることに変わりません。
当時の身分秩序からして史実の大関哲もドラマの一ノ瀬美津も同じような存在ですが、ドラマと史実の間には明確な違いが1つあります。
実在した大関哲は生涯「外で働いて稼ぐ」という経験がなかったのに対して、一ノ瀬美津は東京・日本橋にある舶来品店「瑞穂屋」の従業員として働くことになります。
幕末から明治維新の時代の常識では、上級武士出身の女性が外で「働いて稼ぐ」ことは極めて珍しい行動です。勤労に関する概念は、史実の大関哲とモデルの一ノ瀬美津の間には大きな違いがあると言えるでしょう。
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風、薫る ネタバレ最終回と全話あらすじ
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参考文献
なお今回の記事を作成するにあたって、下記の4冊の文献を参考にしています。これらのうち「明治のナイチンゲール 大関和物語」はNHKの朝ドラ「風、薫る」の原案となっている本です。
- 田中ひかる 「明治のナイチンゲール 大関和物語」中央公論新社
- 吉瀬智子・田中ひかる 連続テレビ小説 風、薫る Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド) NHK出版
- 亀山美知子 「大風のように生きて: 日本最初の看護婦大関和物語」 ドメス出版
- 亀山美知子 「女たちの約束: M.T.ツル-と日本最初の看護婦学校」ドメス出版
- 宮田茂子 《新装版》「大関和」を通して見た日本の近代看護【真説】国家的セクハラを受けた職業集団 星湖舎
