三星百貨店のモデル 三越の包装紙とやなせたかしさん
三越の宣伝部で働いていたやなせたかしさん
NHKの朝ドラ「あんぱん」の第18週で柳井崇(北村匠海)が、東京での暮らしを安定させるために採用試験を受けた「三星百貨店」とは日本橋三越本店のことです。
柳井崇のモデルであるやなせたかしさんも、小松暢さんと結婚した時期に三越に入社し、宣伝部で働いていました。
三越に「拾ってもらった」やなせたかしさん
やなせたかしさんの著作である「アンパンマンの遺書」では、三越時代の思い出をかなりの紙幅を割いて紹介されていますが、実のところやなせたかしさんは面接試験の出来が悪く、不採用の予定だったそうですが、当時の重役の1人に拾ってもらったそうです。
間もなく、ぼくは当時再開した日本橋三越の宣伝部の入社試験を受ける。ぼくはひどく生意気だったから、口頭試問で落第だったらしいが、試験官の中に高知出身の井上慶吉という重役がいて、「わしが責任をとるから、この男を合格にしてくれ」と言ったと、これは入社してから後、井上さんに聞いた。
「お前は俺が入れたのだから、ちゃんと仕事をしてもらわないと困る」やなせ たかし. アンパンマンの遺書 (岩波現代文庫) (p. 87). (Function). Kindle Edition.
やなせたかしさんと「三越の包装紙」
やなせたかしさんは売場で使う看板の絵を描くだけでなく、三越劇場で使うポスターなども手掛けていたそうですが、思い出深い仕事の1つとして「三越の包装紙」の話を披露されています。
ある時三越では包装紙を一新しようと、そのデザインを洋画家・猪熊弦一郎氏にデザインを依頼し、やなせたかしさんは担当者に任命されます。
しかしやなせたかしさんが猪熊画伯から受け取ったのはデザイン画だけ。”Mitsukoshi”の文字は三越の方で書いてほしいと言われてしまいます。そこでやなせさんが取った行動はこうです。
社へ持ちかえって、文字の部分はぼくが描いた。自慢じゃないが、デザイナーなのにレタリングがまったく自信がないが、担当者だからしようがない。自分でも字がまずくて画伯に悪いなあと思った。
やなせ たかし. アンパンマンの遺書 (岩波現代文庫) (p. 94). (Function). Kindle Edition.
申し訳なさそうに”Mitsukoshi”のデザインをしたやなせたかしさんですが、三越の公式Webサイトには今でも「三越の包装紙」である「華ひらく」のレタリングは、やなせたかしさんによって描かれたことが大きく取り上げられています。
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