あんぱん 馬場を「古兵殿」と呼ぶのはなぜか?
古兵の馬場とは
NHKの朝ドラ「あんぱん」第11週「軍隊は大きらい、だけど」では、板橋駿谷さん扮する馬場という古兵(こへい)が登場します。古兵とは柳井崇(北村匠海)のような初年兵(新兵)と対になるような言葉で、1年を超えて陸軍に在籍する一等兵のことです。
板橋駿谷さんプロフィール
1984年、福島県生まれ。NHK朝ドラ「とと姉ちゃん」、「なつぞら」に出演(公式インスタグラムアカウント)。
「一等兵殿」ではなく「古兵殿」
崇や今野康太(櫻井健人)のような二等兵の初年兵たちは、第11週から登場する馬場・甲田などの古兵たちには「古兵殿」と言って敬わなければなりません。
このとき初年兵たちは間違っても「上等兵殿」や「伍長殿」のように、古兵たちに対して「一等兵殿」と言ってはなりません。
なぜなら二等兵から一等兵の昇進は、陸軍に6ヶ月から1年ほど在籍すれば誰にでもなれる階級だからです。その階級にわざわざ「殿」をつけて呼ぶことは、古兵を馬鹿にしていると見なされ「一等兵殿」と呼んだ新兵は容赦無く鉄拳制裁がなされます。
兵が多すぎて上等兵に昇進することが難しかった時代
柳井崇のモデルであるやなせたかしさんが1942(昭和17年)に陸軍に徴兵されたころは、戦時動員のため兵士の数が膨れ上がっていました。
そのためどこの中隊や内務班に配属されても、兵士たちは二等兵から一等兵には簡単になれても、一等兵から上等兵に昇進できない「三年兵」や「四年兵」と言われる古兵がごろごろいたと言われています。
内務班にはいじめと暴力が横行していた
当然のことながら昇進が止まった状態の古兵たちの恨みは凄まじく、その矛先は崇のような初年兵をいじめることに向かっていたようです。やなせたかしさんも著書の「アンパンマンの遺書」で、内務班での生活をこのように回想されています。
それよりも古兵殿が怖い。中でも進級できない一つ星の古兵は、初年兵を眼の敵にしていじめる。 上等兵の三年兵となれば班の中では神様のようで、ほとんど何ひとつ自分ではしなかった。
やなせ たかし. アンパンマンの遺書 (岩波現代文庫) (p. 59). (Function). Kindle Edition.
ちなみに軍隊における内務班の生活の凄まじさや陰惨さについては、仲代達也さんが1959年に主演した映画「人間の條件 第三部望郷篇 第四部戦雲篇」で克明に描かれています。
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