小泉八雲・セツ夫妻の子供・小泉一雄とは
小泉一雄とは
NHKの2025年後期朝ドラ「ばけばけ」のヒロイン・松野トキ（髙石あかり）のモデルとなった小泉セツは、小泉八雲（「ばけばけ」ではレフカダ・ヘブンのモデル）の再話文学の語り手（リテラシーアシスタント）として明治・大正・昭和時代初期に活躍した人物です。
その小泉セツは小泉八雲との結婚によって3人の男の子（一雄・巌・清）と1人の女の子（寿々子）を出産します。今回の記事ではその長男である、小泉一雄（こいずみかずお）（1893~1965年）について紹介します。
小泉一雄は小泉八雲の子供として、八雲の遺稿や書簡の編集に携わり、著作に「父小泉八雲」や「父八雲を憶ふ」といった作品があります。
ちなみに小泉一雄の孫には、日本の民族学者で島根県立大学短期大学部総合文化学科教授の小泉凡さんがいます。
小泉一雄 小泉八雲の長男 参考文献
小泉八雲と小泉セツさんの娘である小泉寿々子に関する内容について参考とした文献は以下の2冊です。
小泉一雄のエピソード 4選
1. 小泉八雲・セツ夫妻の長男として誕生
小泉一雄は1893（明治26）年、小泉八雲・セツ夫妻の長男として熊本で誕生します。「一雄」という名前の由来は「一匹の雄」という意味を込めて付けられました。
他にも小泉八雲とセツの間では「梶夫」や「英雄」という名前も考えられました、いずれも語呂が悪かったりしたため「一雄」という名前に落ち着いたようです。
2. 横浜グランドホテルで勤務
1917（大正6）年に早稲田大学を卒業後、1921（大正10）年まで拓殖大学教務課に勤務。その後、ミッチェル・マクドナルドが経営する横浜グランドホテルの倉庫係として働くことになります。
ミッチェル・マクドナルドは小泉八雲の死後に、小泉家のために八雲の遺稿を整理したり、版権の代理人をしていた人物で、ゆくゆくは小泉一雄をホテルの後継者とするために、自分の手元に置きたかったようです。
「へルンと私」では勤務の合間を縫って、マクドナルドが一雄に直接、英語や文学論を教えている写真が残されています。
3. 関東大震災後、小泉セツと暮らす
しかし1923（大正12）年9月1日に発生した関東大震災のため、マクドナルドの構想は一瞬にして崩れ去ります。地震のためホテルの建物は倒壊し、マクドナルド自身は倒壊に巻き込まれて圧死。
その後、横浜グランドホテルは自然解散となり、小泉一雄は母・小泉セツが住む新宿・西大久保で暮らすようになります。震災の翌年である1924（大正13）年には、輿水喜久恵（こしみずきくえ）と結婚し、1925（大正14）年には長男・時（とき）が誕生。
さらに小泉セツが1932（昭和7）年に脳溢血で亡くなった後は、妹である小泉寿々子を引き取って一緒に生活をしていました。
4. GHQのボナー・フェラーズ准将との交際
日本が太平洋戦争に敗戦した後、小泉八雲の日本時代の著作や研究に興味を持つ外国人研究者たちが、次々と小泉一雄の前に現れて、かつての自宅があった西大久保や、八雲の墓を案内させてほしいと頼みにきます。
残念ながらその多くは物見遊山的なもので、小泉一雄を辟易させていましたが、戦前から小泉セツとも交流があったボナー・フェラーズ准将は別でした。
フェラーズ准将はGHQ（連合国軍最高司令官総司令部）でダグラス・マッカーサー元帥の軍事秘書官を勤めた人物で、昭和天皇が東京裁判で戦犯者として裁かれることを回避した人物として知られています。
フェラーズ准将は日本に上陸したのち八方手を尽くして、小泉一雄とその家族を探させて、ついに連合国軍最高司令官総司令部で対面を果たします。そのときの気持ちを小泉一雄は著作の「父小泉一雄」でこのように回顧しています。
遂に第一相互ビル六階で面会した時には、緑眼に涙を浮べて老生を抱擁され、「妻子は何うした？」が第一声であった。日本はアメリカに戦争で負けた。科学で負けた。が今、私は人情でも氏に負けた。論語巻頭の「朋あり遠方より来る亦楽しからずや」の一語がこの時頻りと脳裡に浮んだ。
小泉一雄. 父小泉八雲 (p. 19). (Function). Kindle Edition.
ちなみに、フェラーズ准将は小泉一雄の息子である小泉時をGHQの無線通信士として雇うようはからっています。小泉時は、敗戦直後の日本人としては珍しいGHQで雇われたオフィスワーカーとだったのです。
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