朝ドラ あんぱんの八木信之介(妻夫木聡)のモデルについて
八木信之介のモデルは2人
朝ドラ「あんぱん」で妻夫木聡さん扮する八木信之介(やぎしんのすけ)は、株式会社サンリオを創業した辻信太郎さんと、新屋敷(しんやしき)上等兵という実在の人物2人が、モデルになっていると考えられます。
柳井崇と軍隊で知り合い詩や文学を愛する八木信之介
NHKは「あんぱん」に妻夫木聡さんが出演することを発表するにあたって、八木信之介の役柄をこのように説明しています。
戦時中、柳井 嵩(北村 匠海)が所属することになる小倉連隊の上等兵。 軍隊になじめない嵩を気にかけ、折にふれ助け舟を出す。戦後、嵩と思わぬ再会を果たし、朝田 のぶ(今田 美桜)と嵩の人生に大きな影響を与えるようになる。
さらにチーフ・プロデューサーの倉崎憲さんは八木信之介の役柄についてこのように追加説明をしています。
妻夫木さんに演じていただく八木信之介役は、戦地で嵩と出会い、戦後も長きに渡ってのぶと嵩に大きな影響を与えていくことになる人物です。厳しくもありながら、詩や文学を愛する一面も持ち、人間の本質と時代の流れを見抜き、嵩の詩を書く才能にも気付いて大きな流れを作っていくようになります。
どうやら八木信之介と柳井崇(北村匠海)さんの間には「軍隊」と「詩や文学」が共通のワードが横たわっているようです。
詩集「愛する歌」と株式会社サンリオ
やなせたかしさんの詩集「愛する歌」
実は柳井崇のモデルである漫画家・やなせたかしさんは生前に書かれた「アンパンマンの遺書」で、陸軍に徴兵されたのちに小倉の野戦重砲連隊で出会った先輩の戦友と、1966年9月に初めて出版した詩集「愛する歌」のことについて言及しています。
その中で登場するのが新屋敷上等兵と、山梨シルクセンターという会社の辻信太郎社長です。
八木信之介のモデルの1人 新屋敷上等兵
やなせたかしさんは著書の「アンパンマンの遺書」で、野戦重砲連隊の初年兵として内務班に配属されたときに戦友とされた、新屋敷上等兵についてこのように紹介されています。
ぼくは新屋敷上等兵殿の戦友にされた。三年兵で鬼屋敷と呼ばれて恐れられていたが、なかなかの快男子で、特に馬の扱いには優れていた。
手先が不器用なぼくは、とても上等兵殿の世話をするどころではなかったが、馴れぬ手に針を持って襟布を縫いつけたり、上等兵殿の靴下や下着の洗濯をした。上等兵殿が風よけになって、いくらかリンチの嵐は防げた。やなせたかし「アンパンマンの遺書」岩波書店 53ページ
八木信之介のモデルの1人 辻信太郎さん
1960年代、やなせたかしさんはラジオドラマの仕事をされるとき、必ず自分で詩を書いて劇中歌として使われていたそうです。そんなとき山梨シルクセンターの辻信太郎社長と知り合い、「うちで詩集を出版しましょう」と声をかけて下さったそうです。
と言っても当時の山梨シルクセンターには出版部もなければ、編集部員もいません。おまけにやなせたかしさんの詩集を出すことは、従業員も銀行も大反対だったそうですが、出版に踏み切ります。
「絶対に迷惑はかけないから」という約束で、出版部ができた。
辻社長は学生時代、西条八十の「蝋人形」を愛読していた詩人肌の文学青年で、これが後年サンリオ社の体質の根底になって、大ヒットするキティちゃんの誕生につながっていく。とにかく出版部の第一号の出版物は、やなせたかし著、詩集「愛する歌」である。やなせたかし「アンパンマンの遺書」岩波書店 151ページ
辻信太郎さんは株式会社サンリオの創業者
すでに引用で示した文章で述べている通り、「山梨シルクセンターの辻信太郎社長」とは、キティちゃんのキャラクターで有名な株式会社サンリオの創業者・辻信太郎さんのことです。
1966年に山梨シルクセンターとしてやなせたかしさんの詩集「愛する歌」を出版したことについては、株式会社サンリオの社史でも紹介されています。
あんぱん 登場人物 モデル一覧
