座間晴斗 モデルは東京高等工芸学校 杉山豊桔教授
朝ドラ「あんぱん」で山寺宏一さん扮する嵩が通う芸術学校の教師・座間晴斗(ざまはると)は、実在した杉山豊桔(すぎやまとよき)・東京高等工芸学校教授です。
朝ドラ「あんぱん」の柳井崇(北村匠海)は、漫画家のやなせたかしさんをモデルとしていますが、そのやなせたかしさんは、現在の千葉大学工学部デザイン学科の前身にあたる、東京高等工芸学校図案科を卒業しています。
あんぱん 芸術学校 モデル 東京高等工芸学校図案科(今の千葉大学)
杉山豊桔とはどんな先生だったのか?
NHKが2024年11月18日に公開した記事では、山寺宏一さんは 杉山豊桔がモデルと考えられる座間晴斗のキャラクターとしてこのように説明されています。
座間晴斗は、やなせ先生の恩師がモデル。型にとらわれず本質を見抜き、学生達に真の自由を説く、当時としては稀有(けう)な先生だと思います。ドラマでは、飄々(ひょうひょう)としながらもユニークでおちゃめな面が加わっているような…。
杉山豊桔教授の見た目
杉山豊桔教授の風貌はちぢれ毛で、両方の眼がひらいているが、都会的に洗練されていたと言います。
やなせたかしさんも2005年に書いた本である「人生なんて夢だけど」では、恩師の杉山豊桔教授や自分が通っていた東京高等工芸学校についてこう語っています。
ぼくはマグレで入学したから、もっと勉強すればよかったのですが、遊んでばかりいて後悔しています。自由主義が学校の基本方針だから、実はぼくの体質にどんぴしゃり!なにしろ担任の杉山豊桔(とよき)教授が「机にかじりついてもデザイナーにはなれない。銀座へ行って遊んでいた方がよほど感覚がよくなる」と言うのですからたまりません。先生の教え通り金もないのに毎日銀座へ通ってましたね。
やなせたかし「人生なんて夢だけど」 フレーベル館 78ページより
杉山豊桔教授の考え方 自由放任主義
やなせたかしさんの妻である小松暢さんが亡くなった後、1995年に書いた「アンパンマンの遺書」では、やなせたかしさんは杉山豊桔教授が、「デザインの学校を出たからといって別にデザイナーにならなくてもいい、小説家でもタップダンサーでも好きな道に進めばいい」と教えられたと語っています。
諸君は既に紳士である。自由に責任をもって行動してほしい。ただ一言注意しておくのは、あまり机にかじりついて勉強しているようでは碌な作品はできない。ここは銀座に近い。一日に一度ぐらい銀座に出て散歩するがいい。そこで吸収するものは、学校で習うものよりも栄養になる。図案科に入ったからといってデザイナーにならなくてもいい。小説家でもダンサーでも何でもいい。
やなせたかし「アンパンマンの遺書」 岩波現代文庫 27~28ページ
まさに朝ドラ「あんぱん」に登場する座間晴斗とは、東京高等工芸学校の杉山豊桔教授がモデルになった人物であると言えるでしょう。