一ノ瀬美津は、主人公りんの母として登場する重要人物です。
美津は創作キャラクターですが、史実をもとに描かれており、モデルを知ることで理解が深まります。
▼要点まとめ
・モデルは大関哲
・武家出身の女性
・母としての価値観が反映
本記事では、大関哲の人物像と史実をもとに、美津との関係を解説します。
→ 美津とはどんな人物か
→ 美津とりんの親子関係
→ 美津はどうなる?結末
結論|美津のモデルは大関哲
結論から言うと、「風、薫る」の一ノ瀬美津のモデルは、大関哲と考えられます。
▼要点まとめ
・モデルは大関哲
・史実をベースにした人物設定
・母としての価値観にも影響
大関哲とはどんな人物か
生い立ちと家族背景
「風、薫る」に登場する一ノ瀬美津(水野美紀)のモデルは、りんのモデルとなった大関和さんの母・大関哲(おおぜきてつ)であると考えられます。
大関哲は、江戸時代後期の下野国烏山藩(現在の栃木県那須烏山市)を治めていた藩主・大久保家の娘であると考えられます。
大関和さんの生前の業績を記した「《新装版》「大関和」を通して見た日本の近代看護」には、このような記述があるからです。
大関の父、弾右衛門は五人の子供と下野国烏山城主の娘であった妻の哲を残して傷心のうちに他界するが、その少し前に娘の和を結婚させている。
社会的立場
江戸時代後期から明治維新の時期まで下野国烏山藩を治めていた大久保家は、いわゆる「三河以来の譜代大名」の家系です。
「三河以来」とは江戸幕府を開き、初代の征夷大将軍となった徳川家康が、まだ三河国の一大名に過ぎなかった頃からの「最古参の家臣」であることを意味します。
身分や家柄を何よりも重んじる封建社会において、大関哲の実家である大久保家は、優れた血統であり、その血筋が大関哲の社会的立場を決めていたことになるでしょう。
人物像
こうした家族背景や社会的背景もあり、大関哲の人物像を一言で言い表せば「お姫様」です。
ただしここでいう「お姫様」とは「何か可愛らしい」や「弱々しい」という意味ではなく、「気高さ」という意味です。
具体的には、戦争などの非常時において、家中にいる一族の女・子供、さらには女中・武家奉公人の先頭に立って、怪我人の看護や兵士たちの食事の支度、武器・弾薬の補充など、戦闘行為以外のすべてを率先して引き受けることを意味します。
言い換えれると、大関哲は「高貴なる者の義務(nobles oblige)」を理解した人物だった考えられます。
史実とドラマの違い
共通点
このように大関哲は「高貴なる者の義務(nobles oblige)」を理解した人物であるとすると、「風、薫る」の一ノ瀬美津と多くの共通点を見出せることができます。
例えば「風、薫る」の第1週1話において一ノ瀬美津は、一ノ瀬家は明治維新前に武家を辞めて百姓に帰農しているにも関わらず、娘であるりんと安に薙刀の稽古をさせています。
このシーンは美津が上級武士の出身であるという設定も含まれていますが、「高貴なる者」の務めとして非常時に備えておくという意味も含まれていると考えられるでしょう。
脚色された点
史実の大関哲は、那須烏山藩の藩主・大久保家の娘です。一方、「風、薫る」の美津は「那須にあった小藩の旧藩主の一族として生まれた」とNHKによって設定されています。
どちらも江戸時代の武家としては、かなり上層にいる身分ですが、ドラマの設定は史実をややぼかしているという印象があるでしょう。
物語上の役割
「風、薫る」の美津は、ドラマの展開とともに、東京・日本橋にある舶来品店の「瑞穂屋」で働き始めます。
→ 「瑞穂屋」は東京・日本橋の舶来品店で清水卯三郎が経営
これは幕末から明治時代にかけての日本の常識からすると、かなり珍しい設定でしょう。なぜなら「お姫様」である上級武士の娘が、他人に雇われて賃仕事をするなど考えられなかったです。
賃仕事などは女中・中間・小者といった身分の低い武家奉公人がすることで、「お姫様」がするようなことではありません。
その点、美津は自ら進んで「瑞穂屋」の従業員となっていますので、「かなり変わった人」ということになります。NHKは「風、薫る」の美津は「新し物好き」であるという人物像をより強調したかったのかもしれません。
なお史実における大関哲は、1880(明治13)年に大関和さんとともに東京に移住したのちも外に出て働くことはなかったようです。
大関哲は、看護婦として外に出て働く大関和さんに代わり、「大関家の母」として孫にあたる大関六郎さんと大関心さんの養育にあたっていました。
大関哲の人物像は美津にどう反映されているか
家族観への影響
りんがトレインドナース(看護婦)になることを目指して看護学校に進学。さらに美津が「瑞穂屋」で働くということは、東京における一ノ瀬家は「稼ぎ手が2人いる」ことになります。
明治時代のほとんどの家庭は「一家の稼ぎ手は男性」であったことを考えると、東京の一ノ瀬家は女性4人の家族であるにもかかわらず、「2人の男性(りんと美津)」・「1人の女性(安)」・「1人の女の子(環)」で構成されていることになります。
こうした一家の経済状況は、おそらく美津の家族観に影響を与え、「自分も一家の稼ぎ手である」という意識を芽生えさせるものになると考えられます。
りんへの影響
このように家の中に「大黒柱が2人いる」という経済的な安心感につながるでしょう。
りんのモデルとなった大関和さんは、ある出来事がきっかけで1890(明治23)年9月に帝国大学医科大学附属第一医院を退職させられ、新潟にある高田女学校の舎監に転職し、さらに知命堂病院の看護長を勤めたという史実があります。
一方、NHKはすでに「風、薫る」の後半では舞台が新潟に移り、新潟でりんが出会う人たちが登場することを告知しています。
おそらくりんは、「片方の稼ぎ手」である美津の姿を見て、新潟に安心して単身赴任できるのではないでしょうか?
関連記事(モデルから広げる)
美津とはどんな人物か
朝ドラ「風、薫る」において水野美紀さんが演じる一ノ瀬美津とはどんな人物でしょうか?「風、薫る」のドラマ展開に沿って説明する美津の人物像については下記の記事で詳しく説明しています。
→ 「風、薫る」の母・一ノ瀬美津の役柄・人物像・りんとの親子関係を徹底解説
美津とりんの親子関係まとめ
朝ドラ「風、薫る」で水野美紀さんが演じる一ノ瀬美津の役柄や人物像について、要点だけに絞った記事は下記の記事が参考になります。
美津はどうなる?
美津となった大関哲の没年は1912(大正2)年です。
生年ははっきりとは分からないものの、亡くなったときには、ゆうに80才を超えていたと「大風のように生きて: 日本最初の看護婦大関和物語」が伝えています。
そうした史実から一ノ瀬美津についても、「風、薫る」において最終回近くまで登場する可能性があるでしょう。下記の記事は、そんな美津の結末やネタバレを、モデル・大関哲の史実から分かりやすく説明いたします。
風、薫る ネタバレ最終回と全話あらすじ
風、薫る ネタバレ最終回
風、薫る 全話あらすじ
参考文献
なお今回の記事を作成するにあたって、下記の4冊の文献を参考にしています。これらのうち「明治のナイチンゲール 大関和物語」はNHKの朝ドラ「風、薫る」の原案となっている本です。
- 田中ひかる 「明治のナイチンゲール 大関和物語」中央公論新社
- 吉瀬智子・田中ひかる 連続テレビ小説 風、薫る Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド) NHK出版
- 亀山美知子 「大風のように生きて: 日本最初の看護婦大関和物語」 ドメス出版
- 亀山美知子 「女たちの約束: M.T.ツル-と日本最初の看護婦学校」ドメス出版
- 宮田茂子 《新装版》「大関和」を通して見た日本の近代看護【真説】国家的セクハラを受けた職業集団 星湖舎
