風、薫る 島田健次郎のモデル 鄭永慶(ていえいけい)について
風、薫る 島田健次郎のモデルは鄭永寧
NHKの2026年前期朝ドラ「風、薫る」で佐野晶哉さんが演じる島田健次郎(しまだけんじろう)とは、外国語に造詣が深く、主人公・一ノ瀬りん(見上愛)の良き相談相手となる人物です。
「風、薫る」に登場する島田健次郎のモデルは鄭永慶(ていえいけい)であると考えられます。
鄭永慶は大蔵省での勤務を経て、1888(明治21)年、東京の下谷西黒門町(現在の東京都台東区上野)に日本で最初の喫茶店である「可否茶館」を開業したことで知られています。
風、薫る 島田健次郎の役柄
NHKは朝ドラ「風、薫る」で佐野晶哉さんが演じる島田健次郎の役柄について、以下の通り説明しています。
新しく生まれた言葉や外国語に造詣が深い。りんの良き相談相手になっていく。
風、薫る 島田健次郎 役 佐野晶哉さん プロフィール
2002年生まれ、兵庫県出身。男性アイドルグループ・Aぇ! groupのメンバー。NHKの朝ドラには初出演。
鄭永慶とはどんな人物だったのか
鄭永慶の出自
鄭永慶の先祖をたどると、もともとは1368年から1644年まで中国に存在した明王朝の遺臣であった呉一官にまで遡ることができます。
17世紀半ばに明王朝が倒れ、清王朝が樹立すると呉一官は徳川幕府の体制下にあった日本に亡命。長崎奉行配下の「唐通詞(とうつうじ)」として中国語専門の通訳官に任命されます。
江戸時代のほとんどの間、日本の外交方針は鎖国でしたが、オランダ・中国・朝鮮の3ヶ国に限って長崎における貿易を認めていました。そのため中国語が分かる呉一官の語学力は幕府に重宝されたのです。
鄭永慶の父である鄭永寧(ていえいねい)はもともと呉一官の末裔で「呉」という苗字を名乗っていました。
永寧は呉家と同じく長崎で唐通詞をしていた鄭家の養子となり、幕末期には鄭家でも世襲職となっていた唐通詞をしていました。
鄭永慶の家族について
上述した通り、鄭永慶の父には鄭永寧がいます。鄭永寧は中国語だけでなく、英語も話せました。
幕末期、長崎にやってくる中国船は広州・厦門・福州など中国南部の沿岸地域からやってくることが多く、当時これらの地域にはアメリカの商人やイギリス東インド会社の商人がひんぱんに出入りをしていました。
そのため長崎の唐通詞たちは、貿易目的で長崎にやってくる中国人を通して、アメリカやイギリスの国内事情や言語そのものに触れる機会があったと考えられています。
また唐通詞たちの仕事は、幕府の役人と外国商人たちとの間に立って単に言葉の通訳をするだけではありません。西洋の情報を独自に収集することも含まれていました。こうした背景から鄭永寧は江戸時代の日本においては、極めて珍しいトリリンガル(日本語・中国語・英語)となっていたようです。
なお鄭永寧の語学力は明治政府にも重宝され、1879(明治12)年から1881(明治14)年にかけて外務省の権大書記官(ごんのだいしょきかん)に任じられています。
鄭家の主(あるじ)永寧は、幕末は長崎で唐通事をしていたが、維新後は新政府の外交官となり、日清修好条規の締結にも関わった。永寧には三人の息子がおり、皆幼少期から英語や中国語を習得した。長男と三男は、父親と同じ外交官になるべく学んでいる。
引用した文章中で「長男と三男」という言葉がありますが、これらは鄭永昌(ていえいしょう)と鄭永邦(ていえいほう)のことを指していると考えれます。のちに彼らも父親同様に外交官となりました。
鄭永慶と大関和の関係
鄭永慶は大関和に英語学習を勧めた
朝ドラ「風、薫る」の原案となった「明治のナイチンゲール 大関和物語」の鄭永寧も、ドラマに登場する島田健次郎と同じく、外国語に造詣が深い人物として描かれます。
ある日、鄭家の女中となっていた大関和(一ノ瀬りんのモデル)さんが書斎を掃除していると、部屋に並べられている外国語の書籍に目を奪われしまいました。
すると鄭永慶は大関和さんに英語を勉強するように勧めます。
永慶の書斎を掃除しているとき、和は書棚を埋め尽くしている外国語の本に目を奪われた。幼かった頃、黒羽藩主大関増裕から「大きくなったら、英語を教えて進ぜよう」と言われたことを思い出す。するときあるとき、思いがけず永慶から「外国語に興味があるなら、英語を学びなよ」と勧められる。「これからは英語の時代だよ。英語を身につければ、女でも仕事はいくらでもある」と言われ、心が動いた。
「明治のナイチンゲール 大関和物語」によると、このとき鄭永慶は大関和さんに東京の新橋で植村正度(うえむらまさのり)が経営する英語塾を紹介したとあります。
大関和の英語学習は自分で思い立ったという説
ただこの記事を書くにあたって参考にした別の文献である「大風のように生きて: 日本最初の看護婦大関和物語」では、大関和さんが鄭永寧と知り合いだったことは述べているものの、鄭家で女中をしていたことについては言及していません。
また「大風のように生きて: 日本最初の看護婦大関和物語」は、大関和さんが植村正度(うえむらまさのり)と思われる人物が経営する英語塾で英語を学んだことについても言及しているものの、大関和さんが英語を学ぶきっかけとなったのは、鄭永慶の勧めであったかどうか明確にしていません。
同書によると鄭永慶が紹介した外国人女性と知り合った大関和さんは、通訳を介して話をすることが次第に煩わしくなり、自分で英語を勉強するに至ったと説明されています。
(鄭永慶を通じて知り合った)イーストレーキーの妻と会うたび、通訳を通して会話するのが煩わしくなった和は、当時流行だった英語を習おうと考えた。そこで、植村正度(まさのり)の経営する「正美英学塾」に入門したのだった。
ちなみに植村正度とは、牧師・植村正久(「風、薫る」の吉江善作のモデル)の弟です。植村正久は1888(明治21)年に大関和さんを受洗に導き、生涯にわたって大関和さんが「師」と仰ぐ人物でもあります。
風、薫る 全話あらすじと最終回までのネタバレ
風、薫る 全話あらすじ
朝ドラ「風、薫る」のあらすじ全話まとめ・登場人物とキャスト・モデル人物・相関図を知りたい方は、下記の記事が参考になるでしょう。
風、薫る 最終回までのネタバレ
また「風、薫る」の最終回までのネタバレ・史実解説・家系図・結末などを知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
風、薫る 島田健次郎 モデル 関連記事と参考文献
風、薫る 島田健次郎 モデル 関連記事
朝ドラ「風、薫る」に登場する島田健次郎のモデルと考えられる鄭永慶が、その後どうなったか史実に基づくネタバレについては下記の記事で詳しく説明しています。
また「風、薫る」に登場する人物の中には、佐野晶哉さんが演じる島田健次郎以外にも、実在した人物がモデルとなっている登場人物がいます。その「モデル一覧」については下記の記事が参考になるでしょう。
風、薫る 島田健次郎 モデル 参考文献
なお今回の記事を作成するにあたって、下記の文献を参考にしています。これらのうち「明治のナイチンゲール 大関和物語」はNHKの朝ドラ「風、薫る」の原案となっている本です。
