結論:大関和と清水卯三郎に史実上の関係は確認されていない
「風、薫る」のりんのモデルである大関和さんと、実在した清水卯三郎の間に何らかの交流があったことは確認されていません。
「風、薫る」では「瑞穂屋」を舞台として、りんと清水卯三郎の交流が数多く描かれますが、創作上のフィクションであると考えられます。
清水卯三郎とは何者か?
瑞穂屋(みずほ屋)の商人
清水卯三郎(1829~1910年)は、明治維新後の東京・浅草で「瑞穂屋」という書店を開業。
欧米の技術、学問を目にした経験を生かして実業家として活動。また、かな文字論者としても知られ、「明六社」のメンバーとしてひらがなの普及を主張しました。
近代化に関わった人物
また清水卯三郎は1867 (慶応3)年にフランスで開催されたパリ万国博覧会において、日本人唯一の商人として参加す。日本が近代化する過程で外交・貿易の分野で活躍しました。
「風、薫る」における清水卯三郎の役割
第10話での登場シーン(名刺=瑞穂屋)
「風、薫る」の第2週10話では、那須の奥田家を飛び出した主人公・りんが、母娘2人で暮らすために東京の街中を歩いて必死で仕事を探します。
しかし自分の身元を明らかにしたくないりんは、どこも雇ってくれません。そんなとき紳士が現れて、自分の店を訪ねてくれるよう言ってくれました。
その紳士が差し出した「瑞穂屋卯三郎」の名刺は、「主人公に助け舟を出したよ!」ということを視聴者に印象づける脚本家の意図があったのかもしれません。
この紳士こそ、坂東彌十郎さんが演じる清水卯三郎です。
りんとの関係性(ドラマ内)
「風、薫る」の第3週において清水卯三郎は、りんを住み込みのための長屋を提供した上に、舶来品店の「瑞穂屋」の店員として月3円の給料で雇ってくれました。
つまり、りんと清水卯三郎は従業員と雇用主の関係です。
今後の立ち位置
やがて、りんは第5週で看護学生として「梅岡女学校付属看護婦養成所」に入学し、「瑞穂屋」の店員を辞めることになります。
しかし清水卯三郎が経営する「瑞穂屋」は島田健次郎(佐野晶哉)など、主人公に関わる重要な人物たち交流をする「舞台装置」として描かれます。
そのためりんと清水卯三郎が従業員と雇用主の関係を解消することになっても、清水卯三郎が「りんの人生における案内人」という立場であることに変わりはないでしょう。
大関和と清水卯三郎の関係
なぜ接点が描かれたのか
この記事を書くにあたって後述する参考文献で挙げた本を予め読み込みましたが、清水卯三郎に関わる記述は、一切登場しません。
実在した大関和さんと清水卯三郎に何らかの交流があったかどうか、少なくともこれらの参考文献から確認することはできないのです。
ではなぜ、「風、薫る」ではりんと清水卯三郎の交流が、物語における重要シーンの1つとして描かれるのでしょうか?
その疑問を解くカギは、りんがこれから就くことになるトレインドナース(現在の看護師のこと)という職業にあります。
医学・洋書との関連性
「風、薫る」のりんと清水卯三郎が初めて出会うことになる第2週10話が設定されている年代は、1886(明治19)年です。
実はこの当時、日本には組織だって看護婦(当時の看護師の呼び方)を教育・訓練する学校はほとんど存在せず、近代看護の黎明期にある時代でした。
史実では1888(明治21)年になって初めて、日本でも西洋式の看護学校を卒業した看護婦たちが病院で働くようになります。
こうした背景から看護学生を教育・訓練するために使われる教科書は全て英語の輸入書に頼らざるを得ない状況でした。
創作としての役割(ストーリー上の意味)
実在する清水卯三郎が経営する「瑞穂屋」とは西洋の科学技術に関する書物を扱う本屋であり、医学関連の書籍も含まれていたそうです。
その卯三郎が暑かった医学関連の書籍には看護学について言及する書籍もあったかもしれません。
そうした明治時代初期から中期における看護教育の実態と、「瑞穂屋」が取り扱っていた書物の関係から、実在した大関和さんも清水卯三郎と何らかの面識があった可能性を捨て切ることはできないのです。
「風、薫る」のりんが清水卯三郎との交流や接点を持つこととは、明治時代初期からの中期における看護教育の史実に基づき、創作の幅を膨らませ表現を広げるという意味があると考えられます。
清水卯三郎 「風、薫る」と史実との違い
実在人物との共通点
「風、薫る」に登場する清水卯三郎と、史実の清水卯三郎が共通している点とは「瑞穂屋」という店を営んでいたことでしょう。
「瑞穂屋」という店も、実在した清水卯三郎が明治維新ののちに東京で経営していた店でした。
ドラマ独自の脚色
ただし「風、薫る」の瑞穂屋と実在した「瑞穂屋」の間で違う点があり、ドラマ独自の脚色ではないかという点もいくつか挙げられます。
その1つが店の場所です。「風、薫る」における「瑞穂屋」の住所です。ドラマでは「東京・日本橋」としていますが、実在した「瑞穂屋」の住所は「東京・浅草」でした。
また「風、薫る」の「瑞穂屋」は舶来品店としてその中で西洋から輸入された書籍も販売していると設定ですが、実在した「瑞穂屋」は本屋でありメインとした商売は「輸入書籍の販売」です。
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大関和と清水卯三郎の関係とは? 関連記事と参考文献
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朝ドラ「風、薫る」では、主人公の一ノ瀬りんや大家直美を始めとして、実在した人物をモデルとしている登場人物がいます。
そのモデルがある登場人物については下記の記事が参考になるでしょう。
大関和と清水卯三郎の関係とは? 参考文献
朝ドラ「風、薫る」に登場する「瑞穂屋卯三郎」こと、実在した清水卯三郎に関する記事を書くために参考とした文献は、以下の通りです。
- 田中ひかる 明治のナイチンゲール 大関和物語 (中公文庫)
- 亀山美知子 大風のように生きて: 日本最初の看護婦大関和物語 ドメス出版
- 亀山美知子 「女たちの約束: M.T.ツル-と日本最初の看護婦学校」ドメス出版
- 宮田茂子 《新装版》「大関和」を通して見た日本の近代看護【真説】国家的セクハラを受けた職業集団 星湖舎
- 吉瀬智子 連続テレビ小説 風、薫る Part1 NHKドラマ・ガイド NHK出版
